「SBI・V・S&P500」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」はどう違う

S&P500をベンチマークとしたインデックスファンドとして有名なのが、「SBI・V・S&P500」「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の2ファンドです。どちらも低コストでつみたてNISAの対象ファンドとなっていることから、購入を検討している人も多いでしょう。

しかし、同じ指数をベンチマークとしているインデックスファンドの場合、「何を比較して選べばいいか分からない」という人もいるかもしれません。そこで本記事では、「SBI・V・S&P500」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の運用形態やコストについて比較していきます。ぜひ購入ファンドを選定する際の参考にしてください。

1.そもそもS&P500とは?

S&P500は正式名称をStandard & Poor’s 500 Stock Indexといい、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数です。その成り立ちは古く、1957年から算出が開始され、現在に至るまでダウ平均株価と並びアメリカの株式市場の値動きを示す基準となっています。

Standard & Poor’sについて

米国の格付け会社「S&P Global Ratings(S&P グローバル・レーティング)」のこと。旧社名「Standard & Poor’s」から、今でも「スタンダード・アンド・プアーズ」と呼ばれます。政府が発行する国債や企業の社債の利払いや償還能力について、財務調査などを通して評価しています。格付けを表す格付け記号は、格付け会社によってやや表記の仕方が異なりますが、基本的には長期格付けはトリプルA(S&Pの表記はAAA)が最高位で、トリプルB(BBB)までが「投資適格」と呼ばれています。それ以下は「投機的格付け」とされています。

2.運用方式の比較

「SBI・V・S&P500」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の大きな違いとして、運用形態が挙げられます。どちらもファミリーファンド方式の運用方式をとっていますが、交付目論見書を確認するとその運用形態には違いがあることが分かります。

■eMAXIS Slim米国株式(S&P500)の運用形態

画像引用:eMAXIS Slim米国株式(S&P500)交付目論見書

上記図を見ると分かるように、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)ではマザーファンドの「S&P500インデックスマザーファンド」が直接米国株式を買い付けています。

■SBI・V・S&P500の運用形態

画像引用:SBI・V・S&P500交付目論見書

一方、SBI・V・S&P500ではマザーファンドがさらに「バンガード・S&P500 ETF」へ投資しており、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)よりも1ステップ投資対象が多いことが分かります。

この図を見ると、「間に挟むファンドが増えるほどコストがかさむのでは?」と感じる人もいるかもしれません。確かに一般的には間接的に投資するファンドが増えるほど、投資コストが増加するといわれています。

ただし、投資対象の「バンガード・S&P500 ETF」は2,500億ドルを超える超大型のETFであることから、マザーファンドが直接米国株式へ投資するよりも資金効率の良い運用ができる可能性があるのです。次項では、両ファンドの運用コストを比較してみましょう。

3.コストの比較

投資信託を選ぶ際は、運用にかかるコストも大切なポイントのひとつです。

両ファンドとも購入手数料と信託財産留保額の設定がないため、購入時・解約時には手数料がかかりません。

信託報酬や経費率については若干の差があり、SBI・V・S&P500の方が低コストで運用できる仕組みとなっています。しかし、ここで「じゃあよりコストが安いSBI・V・S&P500にしよう」と決めてしまうのはおすすめできません。

なぜなら「低コストのファンドの方がパフォーマンスが高くなる」とは言い切れないからです。両ファンドの運用成果について、次の項目で比較してみましょう。

4.運用成果の比較

両ファンドの直近1年、3年、設定来のトータルリターンを下記の表にまとめました。

参考:SBI証券(2022年9月30日時点)

直近1年、3年どちらの期間もeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の方がより良い運用成果を納めていることが分かります。同じベンチマークであっても運用パフォーマンスに差が出る理由は様々ありますが、そのひとつに「デリバティブ取引の活用」が挙げられます。

SBI・V・S&P500ではデリバティブの直接利用はしないとしている一方、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)では価格変動リスク、金利変動リスクを回避する目的でデリバティブ取引が活用されてます。先物を上手く取り入れることが、より良いパフォーマンスにつながっているといえるでしょう。

コスト面だけで見るとSBI・V・S&P500の方が魅力的に見えますが、トータルリターンも含めて考慮すると、資金効率が良いのはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)であることが分かります。このように、ファンドを選定する際は1つの項目だけでなく、様々な情報から総合的に判断することが大切です。

5.違いを理解して購入するファンドを決めよう

本記事では、「SBI・V・S&P500」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」について比較してきました。どちらもS&P500をベンチマークとしたインデックスファンドですが、運用形態やコスト、パフォーマンスに違いが見られました。

投資信託を購入する際は、こうした細かな違いを理解してファンドを選ぶことが大切です。ただ「コストが安いファンドが良い」という選び方ではなく、運用の方法や資金効率、過去のパフォーマンスなど様々な情報をもとにファンドを選ぶようにしましょう。

それでは今回はこの辺で!