ワンルームマンションのサブリース契約は業者に有利!注意点と過去の事例を解説
最近、不動産投資=サブリース契約を結ぶ、ということが当たり前になってきています。サブリースのメリットだけを見ていると、とても魅力的なサービスです。
しかし、サブリースの利用者が増えるにつれ、以下のような相談が国民生活センターに多数寄せられています。
- 勝手に賃料を値下げされた
- 解約できずに売却のタイミングを逃した
- 解約する際に高額な手数料を請求された
- 不要な修繕をされたうえに修繕費を請求された
- 売却しづらく大幅に値切られた
このような苦情や相談が多いサブリース契約は、実際業者に有利な抜け穴だらけの契約内容と言うことができます。その抜け穴を、業者が詐欺にならないギリギリで悪用しているケースもみられます。
サブリース契約の内容をよく理解すると、全く必要のないことがわかると同時に、とても恐ろしい契約内容だということもご理解いただけるかもしれません。
今回は、サブリース契約の本質やサブリース契約を悪用したトラブル事例について、まとめました。
サブリース契約を検討されている方や既に契約してしまった方も、ぜひ参考にしてください。
サブリース契約内容を悪用する悪徳業者が存在する!
サブリースがオーナーのリスクを肩代わりしてくれているように錯覚しがちですが、実態は違います。
サブリース契約ではサブリース会社は借主です。借主保護を目的とした借地借家法において、借主は保護される立場になります。そのため、オーナーからの契約解除が容易でないのです。
これらの点を悪用するサブリース会社があとを絶ちません。悪徳業者の手口に引っかからないように事前に知識を付けておいてください。
それでは、実際にあったトラブルに巻き込まれてしまった事例について見ておきましょう。
サブリースを使った悪質な事例
これからお伝えする内容は、サブリースで実際に被害に遭われてしまった事例です。契約内容を悪用し、賃料が一方的に下げられ、かつサブリースが解約できない事例、警察沙汰になってしまった事例と、サブリース契約の中古物件を高値で購入してしまった事例をお伝えします。
事例1:保証賃料が減額されてもサブリース契約の解約ができず売却を検討するも手出しが数百万円
本事例は、オーナーに不動産会社から保証賃料の減額通知がきたことから始まります。賃料が減額されれば月々のキャッシュフローが悪くなること、今後同様に下げられ続けるとより収支が悪化していくことを危惧。そのため契約書に記載されている契約解除条項に沿って解約を申請、しかしサブリースの契約が解除できなかったケースです。
契約解除条項は以下のとおりに記載(要約)されていました。
- 貸主が解約する場合は違約金として、賃料の1ヶ月分を支払う
- 6ヵ月前までに書面で通知する
このオーナーは、契約内容どおりに行動したにもかかわらず、サブリース会社から「正当な理由が認められない」と解約を拒否されました。正当な理由の解釈が問題になりますが、普通に仕事して生活しているレベルですとまず理由になりません。
保証賃料の減額により毎月のキャッシュフローが悪化したことで月々の負担が増加、これ以上保証賃料が減額され負担がさらに増えないうちに売却を決断しました。
しかし、サブリース契約付物件のため相場の2割近く安い金額でしか買い手がつかず、それだと売却時に数百万円の手出しが必要なことが分かり、売却も断念しました。
なぜ、サブリース会社は解約を拒否できたのか?と疑問をお持ちだと思います。これは、借地借家法が法的根拠になります。
借地借家法は、本来弱い立場にある「借主」を守るための法律のため、簡単に解約できなくなるばかりでなく、家賃の減額も周辺事例を示されれば従う他なくなります。サブリース契約ですと、管理会社(販売会社と同じまたは、実質同じケースがほとんど)が借主となり守られる立場になります。
このようにサブリース契約は、サブリース会社側が有利になり、オーナー側が不利になる契約であることを十分に認識しましょう。サブリース会社が大手または零細企業かは、関係ありません。
事例2:「転貸先の情報(入居者情報)の開示義務なし」を利用され、部屋が風俗店に!
サブリース契約で怖いのが「今いくらの賃料で誰が住んでいるのかわからない」という点です。このサブリース契約を悪用され、警察沙汰になってしまった事例があります。
次の経緯で問題が発覚しました。
- ある日警察から「あなたのお店でトラブルが発生しました」という連絡が入る
- 詳しく聞くと、所有しているマンションが「お店」になっていることが発覚
- 管理会社に問い合わせても、「開示義務はない」と拒否される
- 警察からの連絡で調べるよう言われたことを伝えるとなんと風俗店と契約をしていることが発覚!
この事実から、即解約を通知しても「契約書にある違約金が発生する」と言われます。契約書の違約金を確認してみると「月額家賃の2年分」と記載。これ以上のトラブルを避けるため、オーナーは違約金を支払ったのです。
つまり、サブリースの「転貸先の情報の開示義務なし」と借主を保護する借地借家法が悪用されたのです。
このようなことは、業者側が意図的に行えますから注意してください。
事例3:「管理会社の都合でいつでも解約できる」を利用され、収支が大幅マイナスに!月の手出し+3,000円が-4万円に!
サブリース契約を結んでいる中古物件を買い、大きな損をしてしまった相談者の事例です。
このオーナーは、不動産投資初心者で以下のワンルームマンションを購入しました。
<相談した不動産業者から以下の物件を紹介される>
- 都内中古、販売価格2500万円
- 年間賃料120万円
- 利回4.8%
- サブリース付
サブリースの契約内容をそこまで理解せず、営業マンに言われるがままに購入。数か月後、サブリース会社から解約の申し出がありました。契約上いつでも辞められるという旨があったため、何の疑いもなく承諾します。
購入直後の毎月の賃料は10万円が入っていました。しかし、解約後の家賃をみてびっくり。賃料が6万円だったのです。利回りが4.8%から2.8%に急落、月の手出し+3,000円程度が、なんと-4万円になってしまったのです。
サブリースを組んでいる最中は転貸先の情報の開示義務がないため「いくらで貸しているか」という数字を教えてもらうことができません。これは購入時も適用されるのです。
おそらく、この物件の実態は、以下のとおりと思われます。
- 業者の物件の本来の価格は2,000万円程度
- サブリース契約を利用し、賃料を高めに設定
- 2,500万円の販売価格でも利回りが4.8%になるように設定
この手口は、物件が売れたら早々にサブリース契約を打ち切り、「後は知らない」という悪質な中古販売方法です。
しかしながら、サブリース契約上、何の問題もないため、このオーナーは現実を受け止め、現在もこの物件を所有している模様です。
以上の事例でみたとおり、サブリース契約を悪用することが可能となっています。通常では不動産を借りづらい業態や個人にでも、好条件で簡単に貸せてしまうのです。
それでは、サブリースでこれほどの問題が生じているのはなぜなのか、どのように対策すればよいのかについて、みていきましょう。
そもそもサブリースって何?
サブリースとは、家賃保証制度のことを指します。もうすでにご存知かもしれませんが、家賃保証とは、空室になっても一定額の家賃収入を保証してくれるというシステムです。
形式としては、サブリース会社が部屋の契約者(借主)となり、その部屋を入居者に転貸するという仕組みです。
元々、地方の土地オーナーに木造アパート建築を提案し、賃貸需要が低い地域のため不動産業者が一括借り上げする仕組みを作ったのがはじまりと言われています。
以下の図がその関係図です。
サブリース会社の家賃保証の保証料は毎月の家賃収入の10〜20%程度が相場です。この保証料が賃貸管理会社の利益になります。
この仕組みだけを見ると、家賃収入の額面は少なくなりますが、それで空室の心配なくマンション経営が出来るのなら、非常にメリットが大きいと考える方もいると思います。
しかし、詳しい内容を知ると疑問に思うことが増えてきますので、チェックしましょう。
実はサブリースの契約内容はオーナーにとって不利
サブリースの契約書には主に以下5つのことが記載されています。
<Check Point>
①管理会社の都合でいつでも解約できるという旨
②オーナー側から解約する場合は違約金を取るという旨 ③契約期間について(一生保証ではない) ④保証賃料は減額していくという旨(定額ではない) ⑤転貸先の情報(入居者情報、賃料)に関しては開示義務なしという旨 |
管理会社は自由に解約できるがオーナーは制約される
③と④の解約の項目に関連し、悪質なトラブルは契約解除(解約)時に発生したケースに多くみられます。つまり、契約規定上業者に有利でオーナーには不利に設定されているのでトラブルになりやすいのです。
サブリース契約下では管理会社からいつ解約されるか、解約されたらどうするかの対策を常に練っていなくてはなりません。
それなら、サブリースの利点である家賃保証という本来の価値に高い保証料を払っている意味がなくなります。一般管理委託契約にして、あとは自分で管理した方が安心です。
契約期間と保証賃料
上記③④の契約期間と保証賃料については、当初の設定賃料がずっと続くわけではないという旨が記されています。契約条項を見ると、必ず「賃料の見直し」という項目があり、小さい文字で、「2年毎に見直しがあります」等が付随して記載されているのです。
これらの規定によって、契約当初の保証賃料は納得できても2年後に例えば10%引きでないと借り手が付かないと言われると受けざるを得なくなることもあります。要は、空室の保証はされるが賃料が下がっていくということです。
この点も当初、不動産営業から聞かされていた内容と違うと感じているオーナーが多いことでしょう。
近年は35年保証サブリースも出てきているが、構造は同じ
ちなみに、近年は35年間空室保証します!と言い切る不動産会社も増えてきています。
とはいえ、基本的には2年更新のものとリスクは変わらないです。むしろそうやって論点をずらそうとする会社は個人的には憤りすら覚えますね。
本来は物件を見極めることがオーナーの仕事なのに、その目を甘くして売りやすくしようとしているのです。
35年空室保証でも賃料は一定ではないですし(一定と言っている会社は要注意です!)、そもそも都内のワンルームマンションは稼働率95%。結局、オーナーが無駄に高い手数料を払い続けるという意味では2年更新のものと変わりません。
繰り返しますが、オーナーにはなんの得もありません。
不動産会社のサブスクリプション収入に組み込まれるのがオチですね。
転貸先の情報(入居者情報、賃料)は開示されない
サブリース契約は、賃借人(入居者)の情報や賃料については、開示義務が設定されていないケースが殆んどとなっています。
物件のオーナーなのに、入居者が誰でどのような条件で貸しているのかも知ることができない訳です。
以上の契約内容を見ただけでも、サブリース契約はオーナーに不利な内容だということがわかるかと思います。
私は、過去に実際の賃料は13万円の物件(賃貸募集のときに偶然発見)がサブリース契約手数料は10%にもかかわらず、9万円の設定だったなんて経験もあります。13万円の10%なら1.3万円が手数料です。本来は11.7万円が9万円となり、毎月2.7万円も損していたなんてことになっていました。
サブリースと一般管理の違い
さらにサブリースの契約内容を掘り下げ、一般管理との違いを比較してみます。
項目 | 一般管理 | サブリース |
手数料 | 賃料の3%~5% | 賃料の10%~20% |
賃料設定 | 自分でできる | 2年ごとに見直される
(大体下がる) |
入居者情報 | 把握できる
(入居者と賃貸借契約を結ぶため) |
把握できない
(サブリース会社と賃貸借契約を結ぶため) |
解約違約金 | - | 3ヶ月~半年分の家賃分手数料が平均的
中には2年分の手数料等といった悪質な契約もある |
賃貸運営主体 | 物件のオーナー | サブリース会社 |
上記のとおり、安定的な収入が保証される代わりに、不利な条件が並んでいます。このため、サブリースを組んでしまうとオーナーが思ったマンション経営が行えなくなってしまうのです。
例えるならば、会社が乗っ取られてしまって、あなたには何ら決定権がなくなり、追い出すことも法的に不可能というイメージとなります。
こうなるとあなたの物件は他者にロックされてしまい、自由に運営できなくなってしまうのです。
サブリース新法で何が変わった?
2020年に国土交通省が「サブリース事業適正化ガイドラインの策定」とともに、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行されました。いわゆるサブリース新法です。サブリースが悪用されすぎたので、法改正まで行われた、ということですね。
そして、以下の重要事項に関する説明義務が規定が盛り込まれました。
- 家賃保証の賃料が減額されること
- 原状回復などの修繕費はオーナー負担になること
- 免責期間があること など
しかし、この法律で重要事項の説明が義務化されただけで、依然としてオーナーが不利な立場であることに変わりはありません。
サブリースで事例のようなトラブルにあわないための対策は?
当記事でご紹介した事例は、訴えられるのでは?と思うほど悪質な事例です。しかし、サブリースの契約内容上、全く問題がないため、訴えることができないのです。
つまり、サブリースの契約を結んでしまうと残念ながら対処方法はありません。対策としては「サブリース契約を結ばないこと」しかないのです。
デベロッパーや不動産会社には、殆んどと言ってよいほど賃貸管理代行子会社や専門部署を設けています。そのなかに、評判が悪くてもサブリース部門があるのは儲かるからです。
しかし、サブリースはトラブルの元であり、条件的にも不利なため不要です。
もし、既に契約してしまった方は、契約内容を確認して、違約金が月家賃の2分の1〜1ヶ月分の範囲であれば、解約を申し出た方がよいかもしれません。
長い目でみて、判断しましょう。もっと悪質な場合は管理契約書に穴がないのか確認が必要です。相談に乗りますので気になる方はLINEなどで連絡ください。
サブリースが必要な物件=空室が多い物件なので買ってはいけない
サブリースのメリットが発揮されるのは「空室が長期的に発生した時」です。でも、このメリット、よく考えるとおかしいですよね。
空室が長期的に発生する可能性がある物件を、買いたいと思いますか?
2018年4月に起きたスマートデイズのかぼちゃの馬車事件は、まさにサブリースが売りの不動産投資だったのですが、空室がありすぎて保証ができなくなってしまったという悲惨な事例です。
つまり、サブリース契約が持続できてしまっている物件というのは、業者が必ず得をしていると言い切れます。そうでないと持続ができないからです。
例えば、東京23区にあるワンルームマンションの入居率は、95%〜98%もあります。言い換えると空室率は2〜5%しかない訳です。横浜や名古屋、大阪、京都、福岡でも10%を超えることは殆んどの物件でありません。
『稼働率95%以上の都内ワンルームマンションにサブリースは不要!』に詳しく書きましたが、特に東京都内のワンルームマンションの空室率は5%で、そもそもサブリース契約をする必要がないのです。
高い入居率があるにもかかわらず、サブリース契約を勧めてくる事自体、不誠実であり危険な業者と判断してよいのではないでしょうか。
月々の収支がプラスだからといって安易に手を出すのも辞めましょう。契約がサブリースであれば、もしかしたら先程の事例にもあげた逆サブリースの可能性があります。数年後に契約解除か家賃の不払いが生じることもあります。
※ニュース「サブリース賃料未納問題浮上」(全国賃貸住宅新聞より引用)
https://www.zenchin.com/news/content-772.php
まとめ
サブリースの契約内容を理解すると、デメリットしかないことがお分かりいただけましたでしょうか。ワンルームマンション投資初心者の場合、どうしてもリスクヘッジに走りやすいですが、都内のワンルームマンションであればその必要はありません。
ワンルームマンション、1棟マンション問わず、不動産投資で成功しているオーナーは一般管理で、サブリース契約を結んでいる人はいません。
また、サブリース付き中古物件を購入することもないと断言できます。
真っ当な業者から良い物件を紹介されると、サブリースが不要なことがよくわかります。もし物件探しをしていてサブリースを勧めてくる業者が「うちは仕組みを改善しています」などと言ってきた場合、その業者は信用しない方がよいでしょう。