マネジメントとは?/P・F ドラッカーが伝えたいスキルや方法を分かりやすく解説

マネジメントとは、一般に「管理」や「経営」と理解されています。具体的には経営資源(人・物・金)を効率的に活用し、目標やミッションを達成を目指す役割や考え方のことです。

また、マネジメントが有効に機能すると、結果として投資効果を高めることもできるとされます。しかし、どのように実践すれば良いのか分からないという方も少なくないでしょう。

そこで、当記事では、エッセンシャル版で100万部を突破した、P・F ドラッカー著「マネジメント」(日本語版1974年)が伝えたいスキルや方法について、分かりやすく解説しています。

忙しくて本書を読んでる時間がない、要約を知りたいという方は、ぜひ参考にしてくださいね。

マネジメントとは?P・F ドラッカーの定義

現代経営学の父と評される著者ドラッカー氏は、英国投資銀行で証券アナリストをしていた人です。

2015年12月には、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著)という小説で、主人公が読んでいた本という設定になっています。

まず、ドラッカー氏のプロフィールから見てみましょう。

著者P・Fドラッカーのプロフィール

 

著者:ピーター・フィルディナンド・ドラッカー(現代経営学の父)

生年月日:1909年11月19日( – 2005年11月11日)

国籍:オーストリア(ユダヤ系)

学歴:独フランクフルト大学、法学の博士号取得、

職歴:

・独フランクフルト大学法学博士

・英投資銀行で証券アナリスト

・米国に移住しベニントン大学教授に就く

・米国スターン経営大学院教授

・「産業経営の近代化および日米親善への寄与」を発刊し勲三等瑞宝章を受賞

・米国クレアモント大学院大学教授

・米大統領から大統領自由勲章を授与

・2005年(95歳)没

著書:『経済人の終わり――新全体主義の研究』、『新しい社会と新しい経営』、『創造する経営者』、『日本成功の代償』、『ドラッカー20世紀を生きて――私の履歴書』など多数

「マネジメント」とは何か? 基本と原則

 

ドラッカー氏は本書の中で、次のとおり定義しています。

  • マネジメントは組織(ビジネス)が成果を上げるための道具、機能、機関。
  • 組織(ビジネス)の成果に責任を持つ者をマネージャーと呼ぶ。
  • 人が何かを成し遂げるのは強みによってのみである、弱みはいくら強化しても平凡になることすら疑わしい。

仮に個人投資家や個人事業者であってもマネジメントは成果をあげる目的において自分自身をマネジメントすることは重要です。

この場合、自分自身のマネージャーとなって、資産・取引先の強み・業務管理の仕組みなどを構築できれば投資や事業の成果は大きく変わってくるでしょう。

つまり、自身の強み、弱みを知って、弱みを補ってくれる強みをもつスタッフやブレーンを持つことがマネージャーだと著者は指摘しているのです。

マネジメントの3つの役割

ドラッカー氏は、ユダヤ人でホロコーストの恐怖を目の当たりにしました。それと同時に、カリスマリーダーが短命であることも経験したようです。

そのためか、マネージャーはカリスマを目指す必要はない。自身の強みと弱みを知り、弱みを補ってくれる強みを持つスタッフやブレーンがいれば最高の成果が得られるとしています。

ここでは、著者が指摘するマネジメントの役割について、ご紹介します。

自らの組織(ビジネス)に特有の使命を果たす

 

自らの組織やビジネスにおいて、何が提供できるかを追及すれば、特有の使命が見つかります。

例えば、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」では、主人公のマネージャーが高校野球チームは誰に何を提供できるか?を考え次の答えを出しました。

  • 対象は自分たちのプレーを見に来る人
  • 感動してもらえるプレーをする
  • 提供できる価値は上手なプレー
  • 甲子園に出場すること

このことをチーム全体に伝え、チーム全体が同じ方向を向きはじめます。つまり、使命を見つけてそれを果たすことにチームが一丸となって、取り組むのです。

ここで重要なのは、マネージャーは野球をしなくとも、チーム特有の使命を見つけ、チーム全体に本質的な価値を知らしめたことです。

仕事を通じて働く人たちを活かす

 

マネジメントは自分自身を含め、働く人たちの強み、弱みを理解する必要があります。ドラッカー氏は、強みのみを活かすことが重要だと説いています。

高校野球のマネージャーが使命を示したところ、甲子園に行くための戦術を監督が徹底して考えるようになり、そのための練習メニューを得意な補欠選手が考えます。チームメイトも甲子園に行くために、それぞれ得意なポジションを見直すのです。

ここで重要なのが、ゴールから逆算した提供すべき価値とどんな役割かチームメイトそれぞれが持っているのかどうかでフィードバックを変えることだと指摘しています。

例えば、練習メニューを組むのが得意な補欠選手のアイデアを少々微妙だとします。もしかすると、チームメイトからブーイングを食らうかもと思っても、目的を見失っていないなら失敗も肥しだと、徹底してサポートして活かすのがマネージャーの仕事です。

社会に与える影響を処理し社会問題に貢献する

 

ドラッカー氏は、何事も社会に与える影響に目を向けること、そして社会問題に貢献する意識が重要と説いています。

高校野球の中では、無名のチームが甲子園に出場して、見に来る親や同じ学校の生徒・職員、地域の人々に感動を与えて元気づける、勇気づけるという貢献があります。

この貢献性が高ければ高いほど、チームメイトへのフィードバックにも繋がり、最適に循環するようになって、成功率をあげることができるということです。

著者は、これら3つの役割を基本と原則とし、「基本と原則に反するものは例外なく破綻する」と述べています。

マネジメントが必要な理由

ドラッカー氏は、最適なマネジメントが実施されているなかでは、致命的な失敗はあり得ないと説いています。

ここでは、ビジネスを対象としたマネジメントの必要性についてご紹介します。

企業(ビジネス)の目的

ドラッカー氏は、企業の目的は当然に成果を最大限に発揮することとしたうえで、そのためには次のように検討するべきと指摘しています。

  • 「顧客を創造」するためにマーケティングが必要
  • その目的は、売り込みをせず、顧客の欲求を満たして「何を買いたいか」を知ること

具体的に見てみましょう。

マネジメントの役割1:マーケティング

 

マーケティングは、売り込まないと売れないものではなく、顧客の欲求を満たした物やサービスを模索するために欠かせません。

顧客が「何を買いたいか」を知って提供できれば、自ずと売れると説いています。「売れる」ではなく「買いたい」物やサービスを知ることが、マーケティングでありマネジメントの役割です。

顧客の欲求を知るためには、顧客がどんな状況で、何が欲しいのか、どんな課題を抱えているのかを知る必要があると著者は説いています。

たとえば、任天堂マリオクラブは、ゲーム好きのモニタープレイヤーをアルバイトで定期的に募集し、開発段階のゲームを何度もテストプレイし、率直な意見をとります。バイトとはいえ、彼らの意見は貴重で、企画変更や作り直し、評価が低ければ開発を中止することもあるのです。

つまり、開発側の企画を顧客に押し付けるのではなく、顧客が「買いたくなるもの」を開発していると言えるでしょう。

不動産投資でいえば、賃貸需要が高く賃借人から人気があり、今後伸びる地域と言えます。

マネジメントの役割2:イノベーション

 

ビジネスにおけるマネジメントのもう一つの役割が、イノベーション(技術革新、新機軸)です。既存商品の新たな使い方を含めた顧客のさらなる満足を生み出すことを自身で模索したり、組織や協力会社にテーマを投げかけます。

そこから新たな価値を生み出すことができれば、そのビジネスはさらに発展し最適な成果を生み出すことができる可能性が高まるでしょう。

例えば、人気PCゲームのフォートナイト(Epic Games)は、2017年に配信開始から現在まで6年以上も同じタイトルでビジネスを継続しています。しかし、その間29シーズン(バージョン)もの、キャラやゲームマップを作成し配信しているのです。

その中には、スターウォーズやドラゴンボールとコラボし、常に注目を集めています。まさにイノベーション(新機軸)と言えるでしょう。

不動産投資でいえば再開発地域などに注目し、海外の大都市の不動産と比較した割安感や将来性から、所有する不動産が生み出す価値がイノベーションになり得ます。

マネジメント(マネージャー)の創造とバランス調整

著者は、マネージャーが役割を果たすためには、以下の思考が必要だと説いています。

大きなものを生み出す仕組みの創造

 

成果を最大化するためには、日常業務を通じて常に大きなものを生み出す仕組み(システム)を創造する必要があるといいます。

例えば、ケンタッキー・フライドチキン(KFC)は、ガソリンスタンド経営に併設したCafeの目玉商品でした。「カーネル・サンダース」ことハーランド・デイヴィッド・サンダーズ(以下、サンダース)は、何度も倒産を繰り返し、このサンダース・カフェを併設し、繁盛するガソリンスタンド経営に辿りついたのです。

しかし、この店舗は火災に遭い再建するもうまくいかず、試行錯誤ののちフランチャイズ化し12年間で600店舗のフランチャイズ網を築きました。圧力釜を用いた「オリジナル・フライドチキン」の製法は、以後80年以上にわたって「オリジナル・レシピ」として引き継がれています。

現在の店舗数はデータがありませんが、おそらく数十万単位の店舗数でしょう。まさに、直営店よりも、大きなものを生み出す仕組みを創造して、現在に至るのです。

不動産投資で言えば、ローンを利用してレバレッジを効かせた資産形成がこれにあたります。不動産投資であれば、自らの資金の限界を超える仕組みを利用できます。

現在と中長期に必要な成果のバランス調整

 

マネージャーは、以下の状況をバランス調整する必要があると指摘しています。

  • 今日のために明日を犠牲とする
  • 明日のために今日を犠牲とする

その目的は、成果を最大化することです。

例えば、不動産投資で資産を増やしたいとします。不動産を購入して家賃収入を得て1年が経過しましたが、購入した不動産の価格が上昇する気配がありません。むしろ、毎月の手出しがあって、収支は赤字です。

不動産は、購入する際も売却する際も諸経費がかかるため、1年という短期では投資効果が表れにくく、諸経費に食われてしまいやすい投資です。

そのため1年で売却してしまうことは、直ぐに結果は出ますが「今日のために明日を犠牲とする」方法です。

逆にそれでも5年は保有した場合は「明日のために今日を犠牲とする」方法を選択したことになりやすいといえます。

そのため、今何が重要なのか、明日何が重要なのかを認識する必要があるのです。投資の成果は時間軸と共に変化するため、当初の計画が重要となります。この計画こそがマネジメントになるのです。

マネジメント(マネージャー)の5つの仕事

筆者は、不動産投資家であるため、本書を参考にどのように対応したかを例にとってご説明しますね!

顧客創造(ビジネス)のためのマネージャーの重要な仕事について、著者は以下の5つの要素をあげています。

  • 目標を設定する
  • 組織する
  • 動機づけとコミュニケーションを図る
  • 評価測定する
  • 人材を開発する

それぞれ見ていきましょう。

目標を設定する

 

マネージャーは、どのような目標を達成したら顧客を創造できるのかを考える必要があります。

不動産投資の場合、購入する不動産を賃貸していただける賃借人の立場にたって、不動産を評価できるように努めました。

組織する

 

目標を達成するためには、チーム(組織)を作らなければなりません。

といっても不動産投資は、最初は自分ひとりです。社員を雇用する訳にもいきません。そのため、以下の担当者を探しました。

  • 購入したい良質な不動産や金融機関を紹介してくれる不動産業者の担当者
  • 購入後賃借人を募集するなど、こまめに対応してくれる不動産管理会社の担当者
  • 物件の原状復帰や設備関連のリニューアルを担当してくれる内装会社の担当者

動機づけとコミュニケーションを図る

 

作った組織を最大限に活かすためには、組織のメンバーとのコミュニケーションをとりながら、動機づけをしてメンバーの能力を伸ばすのもマネージャーの重要な仕事です。

不動産投資の場合、信頼できる担当者と知り合えたら、定期的にコミュニケーションをとるよう努力しました。例えば、紹介された物件があれば、自分の好みの物件を知ってくれているという信頼感があるので、直ぐに買い付けを申し込みます。

購入が決まったら、不動産管理会社の担当者とも同様に接して、連絡があればできるだけ早くレスポンスを返すようにしました。また、内装会社の担当者とも同様に、予算や日程のすり合わせに時間を割いたのです。

評価測定する

 

メンバーの動機づけに加え、メンバーの仕事に対して評価することもマネージャーの重要な仕事です。各メンバーが目的に向かって仕事をしてくれているのかをチェックする意味でも必ずフィードバックすることが大切だと著者は指摘しています。

初めての不動産投資では、担当者を評価するというよりは学ぶことの方が多いでしょう。

それでも、イメージどおりの仕事をしてくれた時には、一言感謝の言葉を伝えることで担当者には、ある意味評価として伝わるはずです。

人材を開発する

 

「大きなものを生み出す仕組みの創造」をするためには、人材を開発する必要があります。そのためには、各人材の強みをより伸ばしていく視点をもつことがマネージャーの仕事です。

筆者の場合は、運よく信頼できる各担当者と知り合えましたが、知り合ったすべての人が信頼できた訳ではありません。

不動産を複数購入する場合は、取引した経験がない不動産会社と折衝するケースもあるからです。そのなかには、不信に感じた業者も少なくありません。

そのため結局は、信頼できる不動産会社の担当者と長くお付き合いしており、アドバイスを貰っています。

マネジメント(マネージャー)に向いている、向いていない人

ドラッカー氏は、マネージャーには向いている人とそうではない人のタイプがあると指摘しています。

それぞれ見てみましょう。

真摯な人はマネージャーに向いている

 

できることに目を向け、決して無理をしない、押し付けない真摯(まじめで熱心)な人がマネージャーに向いているといいます。

真摯さがない人はマネージャーに向いていない

 

強みよりも弱みに目を向ける人、何が正しいかよりも誰が正しいかに関心を持つ人、真摯さよりも頭の良さを重視する人は、マネージャーに向いていないと著者は指摘します。

以上のことから、真摯さと信頼感を重視する人が不動産投資に向いていると言えます。

マネジメントとは?P・F ドラッカーが伝えたいスキルや方法を分かりやすく解説 | まとめ

P・F ドラッカー著「マネジメント」について、著者が伝えたいこと、マネージャーに必要なスキルや取り組み方法について、解説しました。

本記事を書くにあたり再読しましたが、不動産投資においても非常に参考になる要素が詰まっていると感じます。

信頼できる不動産業者の担当者との信頼関係が不動産投資には非常に重要だということですね。

自らが自身のマネージャーとなり、不動産投資という事業を成功させる目線を持って取り組むと、自ずと行動も正しい方向に向かうはずです。