現代人は情報を処理しきれず、迷いや悩みがつきない人が増えたのではないでしょうか。
そんな現代、本書は「五感」を大切にする生活をしようと促し、30万部を突破するベストセラーとなっています。
当記事では、本書で解説されている「ちょっとしたコツを習得し悩みの少ない生き方をする方法」について、分かりやすく解説しています。
特に不動産投資のように長い時間軸のかかる投資では、考えないことが非常に大事です。つい考えてしまって不安になる、という方はぜひ一読を。
「考えない練習」(小池龍之介著)とは
本書の著者である小池龍之介氏は、元浄土真宗僧侶という異色の経歴の持ち主です。なぜ、現在は同職を離れたのかなど見ていきましょう。
著者小池龍之介氏のプロフィール
出身地:大阪府生まれ
生年月日:1978年12月15日生 最終学歴:東京大学教養学部卒業 資格:浄土真宗本願寺派教師課程で教師資格を取得。 職歴:・小池法雄が住職を務める山口市の浄土真宗本願寺派正現寺副住職。 ・ヴィパッサナー瞑想に傾倒していたことが宗派から問題視され僧籍を剥奪され る。 ・月読寺の運営が、宗教法人浄土真宗本願寺派僧侶規程に反し破門処分を受け僧籍 削除。 ・単立宗教法人化の規則変更の認証を受け宗派離脱した正現寺の第22代住職並び に同寺を運営する宗教法人の代表役員に就任。 ・ウェブサイト『家出空間』、寺院とカフェを融合させた『iede cafe』を立ち上 げる。 ・正現寺住職を退任。 著書:『坊主失格』、『「自分」を浄化する坐禅入門』、『読むうちに悩みが空っぽにな る「人生相談」』、『坊主失格』など多数。 ウェブ:自身のYouTubeの公式チャンネルを運営 |
「考えない練習」の効用
著者は、考えすぎで思考を錆び付かせることはやめようと促しています。そのためには、五感(目・耳・鼻・舌・身)に集中しながら生活し練習することで、自身の思考を自由に操ることができるようになるそうです。
また、この方法について、脳研究者である池谷裕二氏との「心と脳の不思議な関係」と題した対談のなかで、科学的にも有効であることが示されています。
筆者の感想としては、本書は実践的で誰でも体験できる方法であり、迷いや不安を解消するのに、一定の効果があると感じられました。
「考えない練習」の要約、なぜ必要か?
近年、ネットの普及により情報量が莫大になりました。総務省によると2002年の情報量を「10」とすると2020年には過去18年間で「6450」倍に増加したといわれています。
本書では、その弊害や対応策が示されているので、見てみましょう。
「考えない練習」で指摘する「心の三つの毒」
仏道で「心の三つの毒」は、「欲」「怒り」「迷い」を意味するそうです。いわゆる、「煩悩」(煩悩)を指します。
著者は、情報量が多すぎる現代人は、考えすぎる「思考病」に陥っていると次のように指摘しています。
「欲」:目に見え、耳に聞こえる情報により「もっと欲しい」という衝動にかられてしまうことを意味します。
「怒り」:欲に比べ、入ってくる情報に「受け入れたくない、見たくない、聞きたくない」と反発する心の衝動エネルギーのことを意味します。その他、「怒り」には「やる気がしない」、「妬み」、「後悔」、「寂しさ」、「緊張」なども、根は同じだそうです。
「怒り」は、煩悩エネルギーとなってさまざまな負の感情となって増幅し、ストレスの元凶やネガティブ思考に陥る原因になります。強い「欲」や「怒り」は煩悩とともに刻み込まれた情報となって、強い執着とともに心の中で何度も繰り返し残響し、潜在化するそうです。
「迷い」:欲や潜在化した怒りは、現れては消える「思考」が引き金になり、次々と連鎖して人を考えさせ続け、結論が導けない「迷い」を生み出します。こうなると音や人の声、味覚などの実感が抜け落ち、体験に対する充足感が損なわれてしまうそうです。
そして、遂には幸福感が損なわれてしまうと指摘しています。では、どのように解決すればよいのか。
著者は、仏道における「八正道(はっしょうどう)」に触れながら、「正しく考える」ことが重要だと言います。
具体的に見てみましょう。
「考えない練習」が教える「正しく考える」ためのトレーニング
正しく考えるためにはトレーニングが必要で、以下の3つのステップが示されています。
ステップ① 自己ルールを課し、ブレない芯を作る
・正思惟(しょうしゆい):思考内容を律す
・正語(しょうご):言葉を律す
・正業(しょうごう):行動を律す
・正命(しょうみょう):生き方を律す
ステップ② 集中力を養う
・正定(しょうじょう):集中する
・正精進(しょうしょうじん):心を浄化する
ステップ③ 気づく
・正念(しょうねん):心のセンサーを磨く
・正見(しょうけん):悟る
念のセンサーで心の防犯チェックをする
自分の心が何をしているのかを普段から見張るように意識すると、やがて気がつけるときがくるそうです。
そして、心を移動させる、心の働きを変えることができると次の力がついてくると示しています。
「念力」:気づく力
「定力」:心の働きを変える
感覚に能動的になり心を充足させる
仏道では「目・耳・鼻・舌・身」+「意」=「六門」で外部の刺激を認識するとされます。具体的には、
「見えている」ものを「見る」ようにする
「聞こえている」音や言葉を「聞く」ようにする
「においがする」ときに「嗅ぐ」ようにする
「味がする」ときには「味わう」ようにする
「感じている」ときには「感じる」ようにする
このように、それぞれに能動的な感覚を使うことで、心は充足するとしています。普段の生活のなかで、具体的な対応方法が示されていますので次の項で要点をご紹介しましょう。
「考えない練習」で身体と心の操り方でイライラや不安をなくす
著者は、ただ「考えない」と思っても、考えてしまうのが人間だと言っています。「考えないようにしよう」と思っていること自体、考えてしまっていると指摘しているのです。
では、具体的にどうすればよいのか、見てみましょう。
話す
正しく話すということはとても難しく、自由に考え、自由に話しているつもりでも、実際は「刺激」によって話させられていることがあると指摘しています。
そうならないためには、
・ゆっくりと話す
・ただし、無理してそうする必要はない
・「慢」(よく思われたい)の煩悩にとらわれないようにする
慢(まん)にとらわれると、中途半端に謝りつつ、中途半端に口答えをすることになると指摘しています。
呼吸する
イライラしているときは呼吸が浅く荒くなっている、リラックスしているときは呼吸が長く深くなっていると指摘しています。
例えば、座禅をして呼吸を意識してみると、普段どれだけ浅い呼吸をしているかに気が付くようになるので、試してみるよう勧めています。
聞く
聞くときは、音に洗脳されないよう意識するよう促しています。例えば、TVCMから流れる音楽など耳にしやすいものはいつの間にか耳に残ってしまい、自発的に覚えたかのように錯覚をしてしまうそうです。
つまり、「誰かに押しつけられた言葉」から「自分の言葉」にすり替わってしまうこともあるといいます。そうならないためには、
・自分から音を出さないような動作の訓練をする
・職場でしっかりコミュニケーションをとりたいなら、街中での何気ない音にも耳を傾ける
・相手の声音や速度、呼吸の変化などに注目し、相手の感情を浮き彫りにして受け止める
よう促しています。
嗅ぐ
ベジタリアンになると体臭、口臭、排便臭を含め、自分の臭いがどんどん薄くなるとし、肉を減らし野菜を増やすと、臭いが薄くなっていくと説明されています。
見る
バラエティなど、怒りを喚起させるもの、心を混乱させるものは見ない方が良いとしています。
こういうものには、人をたたき、人を馬鹿にし、そうしたことは「慢」の欲を誘発するそうです。このように欲とか怒りとかを喚起するものではなく、ニュートラルなものをしっかりとみることが大事としています。
具体的には、次のように指摘しています。
・怒りや欲の煩悩は、必ず表面に出、それは顔に出やすい
・相手を見るときは、あくまでも客観的であるだけで、観察結果をフィードバックしないこと
・自分の評価を気にしている「慢」の煩悩をもつと、相手がつまらなそうな顔をしているのが自分のせいだとか考えてしまう
煩悩が現れないようにするためには、いったん目をつむるか半眼にするかなどで呼吸に意識を向けてみるだけでもよいと勧めています。
書く/読む
恥の意識を持たない煩悩を「無慚」(むざん)というそうです。つまり、はじらいのない意識状態を指します。
ただ、メールやSNS、日記などに、自分が「書く」ときは、良かったなと思ったことだけを書き、ネガティブなことは絶対に書かないように勧めています。
計画する
考えない練習なのに、計画は別。計画しておくと、普段考える必要が少なくなるため、結果的に自分に良い結果が返ってくると言っています。
そして、気分によって計画を変更しないように訓練をすれば仕事がはかどるだけでなく、強い刺激に移り気な気分を制御できるようになっていくそうです。
「なるほど」といったところですね。
食べる
我々は、適切に食べる訓練をしていないので、結果的に食べ過ぎてしまうとの指摘です。食べることを考えないのが一番良いが、結果的に「食べちゃダメ」などのネガティブ思考になっているとしています。
こうならないためには、「足るを知る」訓練が必要とし、
・しっかり「味わう」こと
・考えながら食べるのではなく、食べることに集中をする
・口に食べ物を運んでいくなどの、ささいな動作に意識を向ける
ことで、考えすぎないことができるそうです。
捨てる
整理整頓で重要なのは、物を一回一回片づけ、必要以上に持たないことだとし、次のように説明しています。
所有するとは、
・そのことを心が強く覚えている
・それを失うことに強い抵抗を覚える
・人は欲によって不必要なものをため込む傾向を持っている
とし、自分が持っていることを自覚していないものについては、抵抗感はないので、不要なものは、あえて「捨てる」訓練が効果的と示しています。
買う
物を買うときは、「安いから買う」「ほしいから買う」ではなく、「必要なものだから高くても買う」「本当に必要なものを少なく買う」という考えが必要とのことです。
触れる
集中力が途切れたら、触れている感覚に注意を向けてみる「痒い(かゆい)から掻く(かく)」の暴走を止めてみる。
育てる
困っている人には、「親切」の押し売りではなく、何に困っていて、何を望んでいるのかを浮き彫りにできるまでじっくりと耳を傾けることが重要としています。
そして、「慈悲」とは人のために嘆き悲しむことではない。感情に溺れて嘆く、優しい「つもり」を断ち切ったものが「慈悲」である。
相手を本当に思うのであれば、慈悲の瞑想で、たとえば「亡くなった方が穏やかであるように」と念じることの方が有益と説いています。
また、子育てでは、
・子どもをしっかりと見守りながらも放っておくのが良い
・子どものつらい状況には耳を傾ける必要はあるが、それ以外は放っておく
・幼少期は、泣き叫んでも叱らずに、大丈夫、大丈夫としっかりと抱きしめてあげる
のが、良いと促しています。
以上、本書の一部をご紹介しましたが、筆者の個人的な感想としては、腑に落ちることが多く、試してみて良かったと感じることがいくつもありました。
「考えない練習」レビュー
30万部を超えるベストセラーとなった本書ですが、読まれた方々のAmazonでのレビューを一部、ご紹介します。
普段本は読まないのですが、とても読みやすくあっという間に読めました。内容も深く、勉強になりました。 |
個人的にはすごくいい本だと思いました。常日頃こうではないかと考えている思考法等を第三者の著作によって同じことを語られると再認識出来て自信につながります。
<中略> 30代くらいまでの若者にはすごくためになる本だと思います。初段から2段くらいの有段者が上級位者に向けて書いた本だと言えるでしょう。 |
良書です。
心はひたすら「より強い刺激を求めて暴走する」という特徴を持っていて、その上に強い刺激とはポジティブな考えではなくネガティブな考え事である。 考える事。思う事。が与える害を思い浮かべられない現代社会に生きる私たちに喝を入れてくれます。 |
全体としては、★4つの高評価で、筆者と同様に無駄に考えすぎていたことに気づいた方が殆どではないかと思われます。
不動産投資でいうと、投資を始めてからあれこれ不安になる人がいますが、投資には待つ姿勢が重要となります。そのためには、計画することが大切です。計画しておけば、投資後余計なことを考えすぎなくて済むのです。
「考えない練習」(小池龍之介著)の要約 | あらずじとレビューをご紹介 | まとめ
「考えない練習」(小池龍之介著)について要約を、あらすじとレビューについて、ご紹介しました。
私の場合、主に不動産投資家として活動してきたため、当初は何かと考えすぎて不要な悩みや不安に苛まれることがありました。そんなとき、本書に出会い、自身がどれだけ無駄な考え、感情をもってしまっているのかに気づくことができたものです。
不動産投資は5~10年、物件によってはもっと長い間保有するなど、非常に長い時間軸のかかる投資です。物件によっては月々の収支がマイナスになるケースもあり、数年保有したころに本当に持っていて大丈夫だろうか、と心配になる人もいるでしょう。
しかし、そうした不安から起こす行動は必ず損失しか引き起こしません。
当初の計画通りに、じっくり計画を実行していくことこそが不動産投資の成功に近道といえます。そういう意味で、ついつい不安になってしまう人は、考えない練習を一読してみてください。